朝、目が覚める。時計の針は五時を指している。予定より早く目が覚めた。あと一時間眠れる。ラッキー。


目が覚める。六時半。三十分寝坊。この世に二度寝に勝てる人なんているのだろうか。すぐに着替えて家を出る。


バスはもう間に合わないだろうか。半ば諦めながらバス停に着くと、ちょうどバスが来た。ラッキー。


学校に着く。一限目が始まる。困った。筆箱を忘れた。隣の席の子から声をかけられる。以前から話してみたいと思っていた子だ。シャーペンと消しゴムを貸してくれた。そして、友達になった。めちゃくちゃ嬉しい。


昼ごはんを食べて、次は、三時のおやつ。シュークリームのクリームをひとつもこぼさず食べられた。ラッキー。


そのまま、四限目まで授業を受けた。


帰り道。バスに乗る。ひと席だけ席が空いていたから座った。ラッキー。次のバス停で、おばあさんが乗ってきた。どうぞ、と席を譲る。「ありがとうね、よかったら、と袋を渡された。中にはゆずが五つ入っていた。胸がポカポカする。窓の外を見ると、月がやさしくほほ笑みかけてくれる。


家に着く。今日の夜ご飯は、大好きなクリームシチューだ。今日の金曜ロードショーは、大好きなホーム・アローンだ。今日のお風呂は、ゆず風呂だ。最後は、あたたまった体をお布団に委ねる。


もし、一日に呼び名があるとしたら、忘れ物をしなかった日よりも、バスの席に座れた日よりも、叙々苑で焼肉を食べた日よりも、今日みたいな一日を「いい一日」だと呼びたい。