僕は「うつ」だ。世間には、こころの病気として知られている。僕はみんなに避けられている。みんな、僕に出逢わないように生きている。僕をやっつけるためのお医者さんがいる。僕を対処するための薬がある。


僕はかつて、高校生の君にひどくまとわりついてしまった。僕に出くわした途端、君の目の前は真っ暗になった。君は、頑張りたいのに頑張れなくなった。当たり前にできていたことができなくなった。僕は君のことをどうしようもなく苦しめてしまった。


僕は、誰かと出逢うたびに、僕なんていなければいいのにと思う。みんなを苦しめるだけの僕に一体何の価値があるのだろうと思う。


だけど、君。もしかすると、君は、苦しいと思うことで生きているのかもしれない。「苦しい」を知っているから、「嬉しい」や「楽しい」を感じられて、「生きよう」と思えるのかもしれない。苦しいから、「大切」に気づくことができるのかもしれない。「大切」を大切にしようと思えるのかもしれない。僕に出逢うから、誰かのやさしさに触れられるのかもしれない。僕のことをよく知っているから、君はやさしくなれるのかもしれない。


だから、君がやさしくなれたとき、僕は、僕がここにいる意味を見出すことができる。ここにいてもいいのかなって少しだけ思うことができる。君と僕は、そんな関係でできているんだと思うんだよ。これからも君のやさしさを作るほんのひと部分が僕だったら、嬉しい。